子供に「空母の滑走路は何で斜めなの?」と聞かれたら、どう答えるかで悩んだ件

ここのところ、米韓の軍事演習のニュースがマスコミを賑わせています。

その関係で、空母『ロナルド・レーガン』がテレビに映っていたのですが、我が家のチビに「あの船、なんで道路が斜めについてるの?」と質問されました。

空母の甲板上の滑走路が、船と並行に真っすぐではなく、少し斜めに走っているのを見つけて、疑問に思ったようでした。

我々大人は、滑走路が斜めでも、とりたてて「どうしてかな?」と考えずスルーしたりすることも、子供にとっては不思議で気になることなんですねw

まずは、空母の滑走路が斜めになっている理由を勝手に予想

我が家では、子供から疑問が出た時は、まずは「●●ちゃんはどう思う?」と本人に意見を聞くようにしていますが、今回の問いに関しては、答えを予測するのは難しいようだったので、共に考えてみることにしました。

なぜかというと、考えてみれば、先の大戦の際の日本の艦船上にある滑走路は真っすぐだったので、いつ、どんなタイミングで、どうして滑走路が斜めになったのか、個人的にも気になったからなんです。

私は、海外の映画やドラマが好きなので、軍事がテーマの映像を見る機会が多く、ミリタリー系も大好きなのですが、専門的にあれこれ調べたことはありませんでした。

今回の空母の滑走路についても「斜めに作った方が、長い滑走路が作れるから」とか、「斜めに離発着したほうが、万が一の事故の時、甲板上の物に激突する確率が低くなるから」位にしか考えていませんでした。

(写真は、2017年7月に就役した、アメリカの最新鋭原子力空母『ジェラルド・R・フォード』 引用:ウィキペディア

グーグル先生に、斜めの滑走路について聞いてみた

まず、どうやって調べたらいいのかも分からなかったので、「空母 ロナルド・レーガン 滑走路 斜め」と検索してみました。

何のひねりもなく、そのまんまで恥ずかしいですが、さすがはグーグル大先生。一瞬で解決しました。

船の甲板上に、斜めに滑走路が配置されているものを、『アングルド・デッキ』というんだそうです(または『アングルド・フライト・デッキ』)。

ウィキペディアの『アングルド・デッキ』というページを見ると、このような形式の滑走路が考えられたきっかけから、現状に至るまで、簡潔に説明がなされていました。

ということで、以下、ウィキペディアを参考にまとめてみました。

空母甲板上の滑走路は、いつから斜めになったのか?

 

空母ロナルドレーガン(写真引用:ロイター

ウィキペディアによると、一番に滑走路を斜めにすることを考えたのは、第二次大戦前のフランスだったそうです。

ただ、今とは違う目的で考え出されたみたいで、現在主流となっている目的や考え方・システムは、戦後のイギリスが始まりだったようです。

1952年2月にイギリス海軍は空母「トライアンフ」の直線式飛行甲板に斜め10度のラインを引いて、駐留機の待機スペースを避けて斜めに着艦する実験を行い、成功した。

引用:ウィキペディア『アングルド・デッキ』

1952年というと、ピンとこないんですが、日本で言うと、昭和27年ということなので、戦後のお話ですね。

この後、イギリス軍だけでなく、アメリカ軍でも同様の実験が行われた後、実際に空母のデッキとして採用され、現在ほぼ空母の標準装備となっているそうです。

ちなみに、斜めに走っている滑走路は着艦用、前方に2本ある、真っすぐの滑走路は発艦用と、合計滑走路は3本になっています。

現代型アングルド・デッキの一例(ウィキペディアより引用)

着艦用の滑走路の角度については、特に決まりはなく、一番最初の実験では斜め10度で、以後、試行錯誤が繰り返され、現在は9度が主流になっているんだとか。

何十年も試行錯誤して、結局変わったのは1度かよ!って思うかもしれませんが、1度の違いって、分度器で見ると大したことない差ですが、200メートル位の長さの滑走路になると、かなり大きな差になるんでしょうね。

空母上の滑走路を斜めにするメリットとは?

で、今回の本題、「どうして滑走路が、船の進行方向に対して斜めなのか?」

私が勝手に予想していた「滑走路の距離を長くするため」というのは、間違いではないにしても、サブ的な目的でした。

一番メインの目的は、「事故防止」と「安全対策」。

「アングルド・デッキの運用では、甲板上の駐留機が着艦の妨害にならないようにする事、着艦失敗時の再アプローチを容易にする事が最大の目的となる。」

引用:ウィキペディア『アングルド・デッキ』

まず、「事故防止」について。

甲板そのものが船に沿って真っすぐな滑走路だとすると、そこに、着艦(飛行機が船に着陸すること)を終えた機体や、これから発艦(飛行機が船から離陸すること)する機体の動線が、同じになってしまいます。

そんな時に、甲板に沿ってまっすぐの滑走路だと、飛行機が着艦に失敗すると、勢いあまって、前方に駐機している戦闘機や、機材に衝突する危険性があるんですね。

前方で飛行機がぶつかってる図(ウィキペディアより引用)

なので、滑走路を斜めにすることでできた角のスペースに駐機することで、お互いの機体を安全な状態にしておくことが可能になり、事故を未然に防ぐのが第一の目的。

実際、空母ロナルド・レーガンでは、2006年に、着艦訓練中の戦闘機がフライトデッキに激突して、そのまま海中へ落下するという事故が発生していますが、その際も、損傷したのは、海に落ちた機体のみだったそうです。

あともう一つの目的の「安全対策」。

これは、子供に説明しても分かりにくいかもしれませんが、「着艦失敗時の再アプローチを容易にする事」です。

映画とかでよく見る光景ですが、戦闘機は、すごい勢いで着艦してきて、機械でほぼ無理やり減速させてるんですが、この減速の作業に失敗することがあるんだとか。

スピードを保ちながら着艦してくるのは、減速作業の失敗時に、またそのまま再離陸して、着艦のやり直しができるように、あえてスピードを保っているんですね。

再離陸するためには、滑走路前方に再離陸を妨げる障害物がないことが大前提になるので、発艦時の事故を未然に防ぐのが、アングルドデッキの第二の目的ということになります。

子供の世界でも、運動会のリレー競技で、何年かに一回、バトンを渡し終わってトラック上で止まりかけのお子さんと、これから走っていくお子さんが激突してしまうアクシデントがありますが、突然のことなので、「あっ!危ない!」と思ったら、もうぶつかってしまっているんですよね。

それと同じで(同じかな?w)、止まっている機体と、これから飛んでいく機体が、同じ方向上にいることで、ぶつかる危険性が増すんですね。

なので、子供に空母の滑走路が斜めの理由を聞かれることがあった時は、「限られたスペースを、いろんな係りの人が分け合って安全に使うために、斜めに滑走路の線を引いてるんだよ。」と教えてあげるとよいかもしれませんね。

(ロナルド・レーガン甲板模型・写真引用:ウッドマンクラブ

うちのチビは「斜めに滑走路があったら、ほら、ここに物が置けるね」と写真やイラストを見せると、「マジか~!最初に思いついた人、かしこいな~!!」と言ってました(笑)

なんだかんだ説明が長くなりましたが、『アングルド・デッキ』には、実はもっと奥深い話がたくさんあるのですが、子供に説明するには、これ位で十分かと思います。

もし更に知りたい場合は、ウィキペディア等、詳細説明のあるページを通しで読んでみてください。大人は、けっこう楽しめると思いますよ♪

最後に、チョット余談で豆知識

余談ですが、アメリカの戦艦って、人の名前が多いですよね。

ロナルド・レーガンしかり、ジョージ・ワシントンとか、カール・ビンソンとか・・・

日本の戦艦に、政治家など人の名前を付けるとしたら、護衛艦・中曽根康弘、とか、駆逐艦・田中角栄とかになるんだろうけど、日本の人の名前だとあんまり強そうに感じられないから不思議です(笑)

日本の艦船には、自然のものや、山や川など地形や地名にちなんだものが多いですが、故郷を連想させてくれるような優しい名前と、無骨な船とのミスマッチが、なんとも優美に感じられて、私は個人的には好きですね。

で、今回、アメリカの艦船と日本の艦船について調べていたら、船の命名について、興味深いことが分かりました。

明治以後の日本の特徴として、艦船名に人名を当てないことがあげられるが、これは明治天皇から艦名についての下問があり、臣下が諸外国では偉人の名前をとることがある旨奏上したところ、同意が得られず、以後日本では艦名に人名を使用しないこととなった。

引用:ウィキペディア「船名:日本艦船の命名慣例」)

なんと、明治天皇のお達しがあって以来、日本の船は、敢えて人命を付けていないんですね。

明治天皇のおかげで、現代の日本の船に「中曽根康弘」とか、ダッサイ名前をつけずに済んでいるんですね(笑)

(すみません、中曽根さんの名前がダサいのではなく、人名をつけること自体がダサく感じるということです。念のため)

ちょっと、話がそれちゃいました。ごめんなさい・・・

 

というわけで。

以上のように、『アングルド・デッキ』というのは、船の甲板という限られた空間を効率よく使うために、よく考えられた優秀なシステムであるということを、私達親子は学習しました。

ただ、ロナルド・レーガンが、日本海で戦闘機の離発着で多忙になるような状況は、可能な限り避けてほしいものですね。

現在、朝鮮半島情勢で緊張状態が続いていますが、なんとか平和的に解決できる道が見つかりますように・・・

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